ひと月の医療費はどれぐらい?〔高額療養費〕

2026年8月の制度改正に対応しました。
この記事は厚生労働省の公表資料にもとづき、令和8年8月からの新しい自己負担限度額で書いています。
あわせて、新しくできた「年間上限」についても説明しています。

「日本の健康保険は世界最高クラス」と言われることがありますが、どの部分が優れているのでしょう?

代表的な長所である「高額療養費」について見ていきましょう。

実際に計算してみたい方は計算ツールを公開していますので、参考にしてください。

 

医療費の自己負担割合

日本では国民皆保険というルールがあり、公的医療保険へ加入することが義務づけられています。

会社員であれば協会けんぽか会社独自の健康保険組合、自営業者や無職者は国民健康保険、75歳以上は「後期高齢者医療制度」などが代表的な健康保険です。

健康保険に加入することで、病気やケガで医療費が発生しても、私たちはその一部分を負担するだけで良いことになっています。ただし、自己負担の割合は年齢や所得によって異なります。

被保険者年齢医療費の負担割合
0~5歳2割
6~69歳3割
70~74歳2割(現役並み所得は3割)
75歳~1割
一定以上の所得がある方は2割
現役並み所得は3割
出典:厚生労働省

高額療養費制度

かかった医療費のうち自己負担の割合は上の表のとおりですが、さらに負担を軽減するための「高額療養費制度」というものがあります。

収入ごとに決まる1ヶ月(毎月1日から月末)あたりの自己負担限度額があり、3割や2割などで負担した額がこれより大きくなった場合、自己負担限度額以上払った部分はあとで全額返ってきます。

例えば、40歳の会社員で協会けんぽに加入している年収500万円(月収35万円)の人が病気になり、医療費(元値)が100万円ほど発生した場合を考えてみましょう。医療費の負担割合は

医療費100万円×負担割合3割=30万円

ということで、窓口での自己負担額は30万円となります。 ただし自己負担には限度額があり、この収入の場合

85,800円+(1,000,000円-286,000円)×1%=92,940円

が限度額になるため、

窓口負担額300,000円-自己負担限度額92,940円=207,060円

となり、207,060円が返ってきます。

収入ごとの高額療養費の自己負担限度額

先ほどの例のとおり、40歳の会社員で協会けんぽに加入している年収500万円(月収35万円)の人が病気になり、医療費(元値)が100万円ほど発生した場合の限度額は

85,800円+(1,000,000円-286,000円)×1%=92,940円

と92,940円なのに対し、年収1,000万円(月収70万円)の40歳の方に100万円の医療費が発生した場合を計算すると、

179,100円+(1,000,000円-597,000円)×1%=183,130円

と、負担額が2倍近くまで跳ね上がります。

自己負担の限度額は、「国民健康保険とそれ以外」「70歳未満と70歳以上」で変わるため、合計4種類の表になります。それぞれ確認してみましょう。

高額療養費の早見表

協会けんぽ・会社独自の健康保険組合(共済など)〔70歳未満〕

〔1か月の自己負担限度額〕

所得区分(年収の目安)
標準報酬月額 ※2
自己負担限度額(月)
約1,160万円〜
標準報酬月額 83万円以上
270,300円+
(総医療費-901,000円)×1%
約770万〜約1,160万円
標準報酬月額 53万〜79万円
179,100円+
(総医療費-597,000円)×1%
約370万〜約770万円
標準報酬月額 28万〜50万円
85,800円+
(総医療費-286,000円)×1%
〜約370万円
標準報酬月額 26万円以下
61,500円
住民税非課税 36,900円

〔多数該当・年間上限〕

所得区分(年収の目安) 多数該当 年間上限 ※3
約1,160万円〜 140,100円 1,680,000円
約770万〜約1,160万円 93,000円 1,110,000円
約370万〜約770万円 44,400円 530,000円
〜約370万円 44,400円 530,000円
住民税非課税 24,600円 290,000円

※1 4~6月に支払われた総支給額の平均額 ※2 報酬月額から算出された健康保険料や年金保険料を決めるための額 ※3 年間上限は2026年(令和8年)8月に新しくできた仕組みです。8月から翌年7月までの1年間で数えます

出典:協会けんぽ

協会けんぽ・会社独自の健康保険組合(共済など)〔70歳以上〕

〔1か月の自己負担限度額(世帯ごと)〕

所得区分(年収の目安)
標準報酬月額
自己負担限度額(月・世帯)
現役並みⅢ 約1,160万円〜
標準報酬月額 83万円以上
270,300円+
(総医療費-901,000円)×1%
現役並みⅡ 約770万〜約1,160万円
標準報酬月額 53万〜79万円
179,100円+
(総医療費-597,000円)×1%
現役並みⅠ 約370万〜約770万円
標準報酬月額 28万〜50万円
85,800円+
(総医療費-286,000円)×1%
一般所得者 〜約370万円
標準報酬月額 26万円以下
61,500円
住民税非課税 25,700円
住民税非課税
(所得が一定以下)
15,700円

〔外来の自己負担限度額(個人ごと)〕

所得区分(年収の目安) 外来(個人ごと)
一般所得者 〜約370万円 22,000円
(年間上限216,000円)
住民税非課税 11,000円
(年間上限96,000円)
住民税非課税
(所得が一定以下)
8,000円

〔多数該当・年間上限〕

所得区分(年収の目安) 多数該当 年間上限 ※3
現役並みⅢ 約1,160万円〜 140,100円 1,680,000円
現役並みⅡ 約770万〜約1,160万円 93,000円 1,110,000円
現役並みⅠ 約370万〜約770万円 44,400円 530,000円
一般所得者 〜約370万円 44,400円 530,000円
住民税非課税 24,600円 290,000円
住民税非課税
(所得が一定以下)
- 180,000円

※1 被保険者が市区町村民税の非課税者等 ※2 被保険者とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合

出典:協会けんぽ

国民健康保険〔70歳未満〕

基準所得とは、住民票上の同一世帯のうち、国民健康保険に加入している方の所得を合計したものになります。住所は同じでも、住民票上の世帯が分かれている場合は合計しないことを注意してください。

〔1か月の自己負担限度額〕

所得区分(年収の目安)
旧ただし書き所得
自己負担限度額(月)
約1,160万円〜
旧ただし書き所得 901万円超
270,300円+
(総医療費-901,000円)×1%
約770万〜約1,160万円
旧ただし書き所得 600万円〜901万円
179,100円+
(総医療費-597,000円)×1%
約370万〜約770万円
旧ただし書き所得 210万円〜600万円
85,800円+
(総医療費-286,000円)×1%
〜約370万円
旧ただし書き所得 210万円以下
61,500円
住民税非課税 36,900円

〔多数該当・年間上限〕

所得区分(年収の目安) 多数該当 年間上限 ※3
約1,160万円〜 140,100円 1,680,000円
約770万〜約1,160万円 93,000円 1,110,000円
約370万〜約770万円 44,400円 530,000円
〜約370万円 44,400円 530,000円
住民税非課税 24,600円 290,000円

国民健康保険〔70歳以上〕

課税標準とは、住民票上の同一世帯のうち、国民健康保険に加入している方の総所得金額等から各種所得控除を差し引いた額です。住所は同じでも、住民票上の世帯が分かれている場合は合計しないことを注意してください。

〔1か月の自己負担限度額(世帯ごと)〕

所得区分(年収の目安)
課税所得
自己負担限度額(月・世帯)
現役並みⅢ 約1,160万円〜
課税所得 690万円以上
270,300円+
(総医療費-901,000円)×1%
現役並みⅡ 約770万〜約1,160万円
課税所得 380万円以上
179,100円+
(総医療費-597,000円)×1%
現役並みⅠ 約370万〜約770万円
課税所得 145万円以上
85,800円+
(総医療費-286,000円)×1%
一般所得者 〜約370万円
課税所得 145万円未満
61,500円
住民税非課税 25,700円
住民税非課税
(所得が一定以下)
15,700円

〔外来の自己負担限度額(個人ごと)〕

所得区分(年収の目安) 外来(個人ごと)
一般所得者 〜約370万円 22,000円
(年間上限216,000円)
住民税非課税 11,000円
(年間上限96,000円)
住民税非課税
(所得が一定以下)
8,000円

〔多数該当・年間上限〕

所得区分(年収の目安) 多数該当 年間上限 ※3
現役並みⅢ 約1,160万円〜 140,100円 1,680,000円
現役並みⅡ 約770万〜約1,160万円 93,000円 1,110,000円
現役並みⅠ 約370万〜約770万円 44,400円 530,000円
一般所得者 〜約370万円 44,400円 530,000円
住民税非課税 24,600円 290,000円
住民税非課税
(所得が一定以下)
- 180,000円

※1 区分Iに該当しない住民税非課税世帯 ※2 世帯全員が住民税非課税であり所得が0円かつ年金収入が80万円以下

【2026年8月から】年間の上限額ができました

これまでの高額療養費は「1か月ごと」の上限だけでした。2026年(令和8年)8月から、これに加えて「1年ごと」の上限ができています。

月ごとの上限に届かない月が続いても、1年ぶんを積み上げて上限に達すれば、そこから先の自己負担はありません。長く治療が続く方の負担を軽くするための仕組みです。

数え方は「8月から翌年7月まで」の1年間です。1月から12月ではありませんのでご注意ください。

年収約370万円〜約770万円の方(標準報酬月額28万〜50万円)なら、1年間の自己負担は530,000円が上限になります。

出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」

組合によっては独自の上乗せ制度がある場合も

会社によっては、独自の健康保険組合を持っている場合もあります。「協会けんぽ」「国民健康保険」以外の名前が付いている組合はこのタイプと考えて良いでしょう。公務員などが加入する共済組合も同じ分類になります。

こういったな独自の組合でも、高額療養費制度そのものは協会けんぽと同じです。自己負担限度額などは変わりません。ただし、組合独自の「付加給付」というものが設定されている場合が多く、より充実したものになっています。

例えば「高額療養費と関係なく、月25,000円を超えた部分は組合が負担する」などといった内容が一般的です。この付加給付も収入によって内容が変わる場合があります。

職場独自の組合に加入している場合は、付加給付もしっかりチェックしましょう。

標準報酬月額の区分に注意

協会けんぽなど、サラリーマンが加入する健康保険の自己負担限度額は、標準報酬月額で決まります。標準報酬月額とは、基本給・残業手当・通勤手当・住宅手当など、労働の対価として支払われた総額、いわゆる総支給額を指し、原則として毎年4・5・6月の3か月に受け取った総支給額の平均額から標準報酬月額が決まります。ここでは「何月分の給料か」ではなく「何月に支払われたか」を基準にするので注意してください。

健康保険の保険料適用区分は50等級ありますが、これが1等級変わるだけで医療費の自己負担限度額が大きく変わることもあるため注意が必要です。

例えば、基本給50万円でその他手当がゼロの場合、標準報酬月額は30等級の50万円となります。同じ基本給で残業があった場合などで毎月の総支給額が2万円高くなり52万円になると、31等級の53万円という区分になります。

この場合、元々標準報酬月額50万円だったときの自己負担限度額は

85,800円+(総医療費-286,000円)×1%

だったものが、標準報酬月額は53万円となってしまうと自己負担限度額が

179,100円+(総医療費-597,000円)×1%

と大幅に上がってしまいます。標準報酬月額が高額療養費の区分の境目にある場合には意識しておいてください。

高額療養費制度の適用範囲

高額療養費は健康保険が適用される診療・治療に対して支払った自己負担額が対象となります。そのため、食費や患者の希望による差額ベッド(個室)代、先進医療にかかる費用などは支給の対象とはなりません。

さらに、高額療養費は1ヶ月(毎月1日から月末)単位で計算します。例えば、年収500万円で40歳の方の医療費が100万円の場合、入院期間が1月1日~31日だと自己負担限度額は

85,800円+(1,000,000円-286,000円)×1%=92,940円

となります。

一方、医療費の合計は同じ100万円でも、入院期間が1月15日~2月14日で、各月の医療費が50万円ずつだった場合は1月・2月ともに

85,800円+(500,000円-286,000円)×1%=87,940円

となり、同じ30日の入院でも、合計175,880円と大幅な増加になってしまいます。

病気やケガをする時期、入院や治療に掛かる期間は本人で選ぶことができないため、医療費は余裕をもって備えておく必要があります。

高額療養費制度の支給期限と限度額適用認定表

高額療養費制度の請求は原則として、診療を受けた月の翌月の初日から2年間を過ぎると支給を受けられなくなります。早めの申請を意識してください。

申請は加入している健康保険に対して「高額療養費支給申請書」を提出します。申請から支給までは3か月程度かかるため、その間は立て替えておく必要があります。

しかしあらかじめ医療費が高額になることが分かっている場合などは「限度額適用認定証」を申請しておくことで、立て替えの負担を無くすことができます。限度額適用認定証は、加入している健康保険に申請することで手に入ります。認知症を病院や薬局に提示することで、請求される医療費は自己負担限度額までとなり、払い戻しを申請する手間も省けます。

ただし、認定証による医療費の計算は遡ることができず、認定証を提示した月からが対象となるため、申請は早めに行ってください。

自己負担限度額に多数該当した場合

限度額に達した月が1年間に3回以上あった場合、4回目から「多数該当」となり自己負担限度額が下がります。

40歳の年収500万円の人の自己負担限度額の計算式は

85,800円+(総医療費-286,000円)×1%

ですが、多数該当となると、翌月以降は

総医療費に関係なく、一律44,400円

まで下がります(多数該当後の自己負担限度額も、収入によって異なります)。この多数該当の金額は、2026年8月の見直しでも変わっていません。直近12か月のうち通算して3回以上限度額を超えていれば適用されます。3ヶ月連続でなくても適用されます。

高額療養費制度だけで保障は十分?

通常の入院費や手術費であれば、公的医療保険の適用対象内での治療となるため、高額療養費制度によって1か月あたりの自己負担額をある程度抑えることができます。

しかし、高額療養費制度ではカバーできない入院中の食事代や差額ベッド代などの費用もあります。高額療養費の自己負担上限額と、制度の対象にならない費用を合わせて考えると、民間の医療保険への加入を考えるべき方も多いでしょう。

特に気にしなければならないことが、治療の選択肢に先進医療や自由診療を加える場合です。

これらの治療は公的医療保険(健康保険)の適用対象外です。特に自由診療に関しては医療費がすべて全額自己負担になり、医療費の総額が非常に高額となる可能性があります。また、退院後の通院治療が長期化することも少なくありません。

このような貯蓄で賄えないレベルの医療費にも備えるためにも、民間の医療保険を活用して先進医療や自由診療を受けられる選択肢を確保することが家計の安心につながります。

まとめ

実際に長期の入院をしたことがある方や手術を受けたことがある方でなければ、医療費にいくらぐらいの費用が掛かるのか、どれだけ公的保険に保障があり、自分の手出しがいくらになるのか考える機会は少ないでしょう。

これまでお話ししてきたように、医療費に関しては高額療養費制度という手厚い保障がありますので、自分の毎月の医療費上限がいくら位なのかを、ある程度把握しておくことが大切です。

その上で、先進医療や自由診療、長期入院に備えるものとして、民間保険への加入・見直しが必要なのかを検討してみてください。

※ この記事の情報は2026年9月9日時点の法令等にもとづきます。制度は改正されることがあります。厚生労働省Webサイトを参考にしています。記事の内容の正確性には配慮していますが、内容の誤り・データ更新の遅れなどにより損害が発生した場合でも、当社は一切の責任を負いかねますのでご注意ください。

 

実際に計算してみたい方は計算ツールを公開していますので、参考にしてください。

投稿者について

着物のファイナンシャルプランナー 尾山道郎
着物のファイナンシャルプランナー 尾山道郎
高校中退・元公務員・MENSA会員・着物のファイナンシャルプランナー。
1500名を超える圧倒的なコンサル経験と、理論に裏打ちされた「当たり前ではないアドバイス」を得意としている。