出産・育児の経済的負担を軽減するための給付金とは?

出産や育児は、家族にとって大きな喜びであると同時に経済的な負担も伴います。そんな時に役立つのが、出産一時金、出産手当金、育児休業給付金です。これらの給付金は、出産や育児にかかる費用を軽減し、安心して新しい命を迎えられるようサポートしてくれます。

本記事では、これらの給付金について、支給金額、支給期間、条件、延長の条件、給与との代替率、さらに「パパママ育休プラス」や税金・社会保険料の免除による手取り額の増加、そして2025年4月1日からの育児休業給付の改訂予定について詳しく解説します。


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1.出産一時金とは?

出産一時金の概要

出産一時金は、出産時の医療費を補助するために支給される給付金です。この制度は、出産に伴う経済的な負担を軽減し、安心して出産を迎えるための支援策として設けられています。

出産一時金は誰がもらえるの?もらえる額は?

2023年から出産一時金の支給額は50万円に引き上げられました。この金額は、出産にかかる費用の一部または全額をカバーできる金額となっており、多くの家庭で出産に向けた資金計画を支える重要な役割を果たしています。
支給対象者は、健康保険に加入している被保険者およびその扶養家族です。国内外問わず、1児につき50万円支給されるため、双子や三つ子の場合はそれぞれに支給されます。

出産一時金の申請方法は?

出産一時金の申請は、健康保険組合に「出産育児一時金支給申請書」を提出することで行います。また、医療機関での支払いを簡素化する「直接支払制度」を利用すれば、出産費用をあらかじめ自己負担することなく、差額だけを支払うことが可能です。

2.出産手当金とは?

出産手当金の概要

出産手当金は、出産前後の産休期間中に支給される手当で、給与の一部を補填する目的で支給されます。一般的に産休手当と呼ばれています。産前42日間(6週間)と産後56日間(8週間)、計98日間の休業期間に対して支給されます。

産休手当はいくらもらえるの?支給率は?

産休手当の支給額は、標準報酬日額の2/3が支給されます。標準報酬日額は、産休開始前の給与額を基に算出されるため、個人の収入によって異なります。仮に月給30万円の場合、1日あたり約6,600円の手当が支給される計算になります。

産休手当の申請条件は?

支給を受けるための条件は、健康保険の被保険者(自分で健康保険料を払っている人=扶養されていない)であり、出産前後の休業期間中に仕事を休んでいることが必要です。産休期間中に勤務した場合、その期間について産休手当は支給されません。また、休業開始日が産前42日(多胎妊娠の場合は98日)以内であることが求められます。

3.育児休業給付金とは?

育児休業給付金の概要

育児休業給付金は、育児休業期間中に給与の減少を補うために支給される手当です。一般的に育休手当と呼ばれています。育児休業を取得した被保険者(自分で健康保険料を払っている人=扶養されていない)が対象となり、子どもが1歳になるまでの期間に支給されます。保育園に入園できない場合などは、最長で2歳まで延長することが可能です。

育休手当はいくらもらえるの?支給率は?

育休手当の支給額は、育休開始から180日目までは給与の67%181日目以降は50%が支給されます。これにより、収入の減少をある程度抑えることができます。

育児休業給付金が延長できる条件と申請方法は?

育休手当は、保育所の入所が決まらない場合などに延長が可能です。育休手当は本来子どもが1歳になった時点で停まりますが、1歳のときに保育所に入所できなかった場合などには1歳半まで、それでも入所できなかった場合は最大で2歳まで延長されます。延長を希望する場合は、所定の申請書類を提出し、承認を受ける必要があります。

パパママ育休プラスって何?

パパママ育休プラスは、父親と母親がそれぞれ育休を取得する場合に、育休手当の支給期間を1年間よりも長くすることができる制度です。
この制度を使うと父親と母親が交互や同時に育児休業を取得した場合、最大で1歳2か月まで育休手当を受け取ることができます。

4.税金・社会保険料の免除による手取り額への影響

育休中の強い味方!税金・社会保険料免除の仕組み

育休中は給与の代わりに育休手当が支給されますが、育休中の所得税や住民税、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)は原則として免除されます。これにより、手取り額の減少をある程度抑えることができます。

手取り額での代替率の計算

育休を取得せず働いていた時の手取りを、育児休業給付金で何%カバーできているかを「代替率」と言います。
育休手当は給与の67%または50%が支給されますが、代替率が67%や50%という訳ではありません。税金や社会保険料が免除されるからです。ここをふまえ、実際の手取り額を基準にして代替を考えてみましょう。

たとえば給与が30万円だった場合、育休中の手取り額は約20.1万円(67%支給時)または約15万円(50%支給時)となりますが、税金・社会保険料が免除されることで、手取り額が増加し、結果的に実質的な代替率は約80%から90%に達するケースもあります。思っているよりも経済的な負担は小さいかもしれません。

ただし、育休中はボーナスが支給されないことがほとんどですので、この部分の経済的負担は想定しておきましょう。

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5.2025年4月1日からの育休改訂

改訂の概要と手取りで10割になる条件とは

2025年4月1日から、育休手当の支給率が引き上げられる予定です。この改訂により、一定の要件を満たす場合には、手取り額での代替率が10割になることが期待されています。
具体的な条件としては、両親が14日以上育休を取得し、かつその期間が父親の場合は産後パパ育休の期間、母親の場合は産休後8週間以内であることが挙げられます。この条件を満たすと、手取りで実質10割となる水準の給付が受けられます。

育休手当の上限に注意しよう

育休手当には上限があります。例えば、2025年4月の改正後でも、育休手当は休業開始時の賃金×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)という計算式によって算出されますが、上限額は、給付率67%で305,319円、給付率50%で227,850円での支給となり、元々の月給がこれ以上あっても手当の額は増えません。月給が高い方の場合はこの点にも注意が必要です。

6.立て続けに育休を取得する場合の注意点とは

第二子・第三子と立て続けに育休を取得する場合に注意するべき点については、こちらのコラムにまとめていますのでご覧ください。

7.給付金制度を活用するためのポイント

給付金制度を最大限に活用するためには、事前に必要な手続きを確認し、適切なタイミングで申請を行うことが重要です。また、給付金制度に関する最新情報を定期的にチェックし、改訂や条件の変更に対応することも大切です。特に、産休手当や育休手当は、勤務先との調整も必要となるため、早めに上司や人事部門に相談しておくことをお勧めします。

出産一時金、出産手当金、育児休業給付金は、家計をサポートする大切な制度です。各制度の内容をしっかり理解し、計画的に活用することで、出産や育児を安心して迎えることができます。2025年4月からの育児休業給付金の改訂も、経済的なサポートを大きく強化する重要な要素です。今後も制度の動向に注目し、家族にとって最良の選択をしてください。

8.計算ツール

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※ この記事の情報は2024/6/1時点の法令等に基づき、厚生労働省ウェブサイト・全国健康保険協会ウェブサイトなどを参考に作成しています。
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